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出典がないことは「保留」ではない

公開日 2026年8月8日 · 1

ある企業のページには、存命の最高経営責任者について、プレスキットの文言をほぼそのまま写した一文がありました。「業界の先駆者」という表現です。誰も出典を付けていませんでした。十八か月前に誰かが「出典が必要です」というタグを付け、その一文は百科事典に数多く存在する未検証の記述の列に並んで、順番を待っていました。

そしてある平凡な火曜日、その一文は消えていました。タグを付け直されたのでも、ノートページに議論として移されたのでもありません。指摘と同じ編集の中で、そのまま削除されていたのです。依頼者からは戸惑いの連絡が届きました。同じページの下のほうでは、会社の設立年についての段落が二年間同じタグを付けられたまま、誰にも触れられずに残っている。なぜこの一文だけが、一日で消えたのでしょうか。

存命人物に関する物議を醸す記述で、出典がない、または出典が不十分なものは、直ちに除去されるべきである。挙証責任は、それを記載したい側にあり、除去したい側にはない。
WP:BLP、大意

会社の設立年であれば、出典を待つこともできます。誤っていたとしても、百科事典にとっての損害は小さく、訂正も容易だからです。しかし、名指しされた存命人物についての、好意的だが裏づけのない記述は、それが誤りや誇張だったと分かったとき、まったく別の代償を伴います。そのページは他の媒体が事実として扱う出典になってしまい、描かれた本人はそれを自分で訂正することができません。ペンを握っているのは本人ではないからです。「出典が必要です」というタグに対してウィキペディアが通常示す猶予は、この種の一文には、そもそも与えられたことがありません。

何が物議を醸すかを決めるのは、それを読んだ編集者であって、善意で書いた本人ではありません。創業者本人が確認した経歴も、古いインタビューから引かれた出身地も、五年前のページから引き継がれた肩書きも、出典の欠如に誰かが気づいた瞬間に取り除かれる可能性があり、そのページに事前の警告を受ける権利はありません。

だからこそ私たちは、対象が存命の人物である場合、「あとで出典を付ける」という前提で文章を書くことをやめました。名前の挙がる人物についての一文には、書かれるその瞬間に出典が付きます。それができないなら、草稿にすら入れません。あのタグは、記述を一時的に置いておくための場所だったことは一度もありません。存命の人物については、一日たりともそうだったことはないのです。

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各エピソードは編集部の執筆。AdrianとNoraの音声はAI生成です。